館蔵品展 心を装う~衣服と飾りに込められた意味~板橋区立郷土資料館

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*板橋区立郷土資料館(板橋区赤塚5)の「収蔵品展 心を装う~衣服と飾りに込められた意味~」(2020年5月30日‐6月28日)を見てきました。タイトルにあるように人が「装う」ときの思いとは、あるいはその目的のため「装い」には何が表現され、どのような技巧が用いられ、衣服としての機能性を備えているか理解が進みます。本展では「美・礼節・日常・信仰・喜び願い」と着装シーンを括り展示室を6ゾーンに構成し展示物をクローズアップしたり、整然と並べたり、実装させたり、絵画、写真、解説文を加え歩が進められるようになっています。昨年末に全面改装した常設展を順路に従って見ながら2階の展示室に向かいます。

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*「美」のゾーンから観覧。階段を上ると紺地の大振袖がお出迎え。松竹梅、鶴亀、高砂が肩、袖、裾の前後に躍動的に配された吉祥文様の競演に見入ります。区内在住だった日本刺繍職人故島峰和美氏の作品です。縫い取りで描き出された大振袖に繊細で可憐な美を堪能できます。本展への期待はいよいよ高まります。

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*美人画が掲げられ、展示ケースでは金工の髪飾り、べっ甲のかんざしや櫛を見られ時代を超え着飾りへの変わらぬ高揚感が伝わってきます。「美」のゾーンでは、区内に江戸小紋の工場を構える伝統工芸士作の中山道板橋宿を柄付けした色留袖も目を引きます。

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*続いて「礼節」ゾーン。1960年代ころから和装で一世を風靡した黒紋付き羽織。特に入学式、卒業式に母親たちが制服のようにこぞって着用していました。人体に着せて当時を再現、写真資料も添えられています。和装で礼節を重んじていた頃の思いが浮かび、「懐かし~」の声が聞こえてきそうです。

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*装いは「勇気」を奮い立たせます。生死を決する闘いに臨む武士が命をあずける甲冑。2メートルはあろうかと見える加賀藩麒麟蒔絵紋五枚胴具足が現れます。黒光りして敵陣の攻撃をはねのけ攻め込む勇気を与えられる迫力に満ちています。

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*「日常」ゾーンは、農業を営んでいた板橋の人々を紹介しています。戦後、高島平の前身「赤塚たんぼ・徳丸たんぼ」では水田耕作が行われ、東京の食糧供給地帯として重要な役割を担っていました。野良着は木綿製、堅牢さと機能性が求められました。虫除けのため藍染された半てんやもんぺ、股引き、地下足袋、夜具のどてらなど展示。農作業風景の写真は、高度経済成長時代前夜の里人たちの大らかな表情が印象的です。

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*「信仰」と装いは不可分です。板橋が農作地帯であったことは継承されている数々の民俗芸能からわかります。多くは農地信仰にもとづく土着の神事と芸能が結びついたものです。国指定重要無形文化財に指定されている「板橋の田遊び」は五穀豊穣と子孫繁栄を願い、毎年上演されている祭りです。徳丸地区の祭り衣裳である直垂(ひたたれ)には北野神社の梅鉢紋がつけられ、氏神様への祈願を強く印象付けます。赤塚地区の主導者の衣裳も同じく紋付羽織袴が用いられ厳かな奉納行事であることが分かります。また、獅子舞の獅子頭はめったに見られず、まじかに拝められる好機です。

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*興味深くいくつもの装いに触れてきた本展ですが、「喜びと願い」のゾーンに入ります。子どもの成長を祝うお宮参りと七五三に焦点があてられています。ボードには喜びいっぱいの写真が多く掲出され、展示ケースにはめでたい袱紗、晴れ着に欠かせない小物類が並びます。順路を締めくくるショーウィンドはお宮参り用の一つ身が4枚、大人の晴れ着が2枚ずらっと見渡せます。一つ身とはいえ、つくりも意匠も大人に引けを取らない立派なものです。子どもが元気に成長するよう願いを込めた、縁起のよい装いを一堂に見られます。

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*人間にとって「装い」とはなんでしょうか。誰でもTPOに合わせた衣服を身に着けます。奇抜な着こなしも皆が受け入れれば最新トレンドとして流行します。「歌は世につれ 世は歌につれ」と言いますが衣服も似た側面があります。江戸時代から現代までの装いを、板橋区の〝世〟につれながら見ることができる展覧会だと感じました。ところで、人の心は世につれ変化したり不変だったり複雑です。これからも「装い」の役割は、特別な心が求める機会にふさわしく時代性を帯びながら変遷することになるでしょう。本展はバラエティーに富んだ充実した内容です。何度も訪れて観覧したくなります。パートⅡにも期待したいところです。会期2020年5月30日~6月28日。入場無料。



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